Jan 05, 2010
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【社会部オンデマンド】
「今年からEU(欧州連合)との間で刑事共助条約が発効したというニュースがありました。条約にはどのようなメリットがあるのでしょうか。海外との捜査協力といえばICPO(国際刑事警察機構、インターポール)が思い浮かびますが、違いはあるのでしょうか」=東京都板橋区、男性会社員(43)
■締結先は5カ国とEUに
刑事共助条約は、国同士がそれぞれの国での犯罪捜査を協力し合うために結ばれる。捜査権限は自分の国でしか行使できないためで、相手国の捜査機関に捜査の一部を代行してもらえるのが大きなメリットだ。
共助を依頼する内容を具体的に挙げると、容疑者の人定や犯罪歴、犯罪に利用された金融機関の口座の照会など。さらに容疑者の供述内容を裏付けるため、外国の場所の特定や関係者の所在確認まで多岐にわたっている。
さらに近年は児童ポルノや著作権法違反などインターネットを使った犯罪が目立っており、インターネットに接続したパソコンや通信機器などの識別番号を示すIPアドレス、プロバイダーの契約者情報などを求めるケースも増えつつあるという。
ただ、条約を結んでいなくても外国に捜査共助を依頼することは可能だ。外務省を通じて協力を依頼する方法で、「外交ルート」と呼ばれる。しかし、必ずしも相手国の協力が得られるとはかぎらない上、「大使館や相手国の外務省を経由するため、案件によっては年単位の期間がかかるのが難点」(警察庁)だ。
これに対し、条約ルートでは協力が義務になるので確実に回答を得られる。さらに、日本の警察が共助を要請する際には、国家公安委員会(警察庁)が相手国の司法省などの中央当局に直接依頼できるため、時間が大幅短縮されるという。
検察庁や海上保安庁など他の捜査機関が要請する場合は、法務省を通じ相手国中央当局に依頼する。
日本がこれまでに条約を締結したのは、アメリカ(発効平成18年7月)▽韓国(19年1月)▽中国(20年11月)▽香港(21年9月)▽EU(23年1月)。さらに、今月11日にはロシアとの間でも発効する予定で、締結先は5カ国とEUとなる。
警察庁によると、条約を結ぶ相手国は、外交ルートを通じた捜査共助要請の実績やこれまでの協力関係などを総合的に勘案した上で、外務省が関係省庁と協議して決めている。EUとの間では11〜21年に日本からの要請が37件、EUからの要請が130件あり、相互の利益になると判断されたという。
■強制処分も要請可能
刑事共助条約と混同されがちなのが、フランス・リヨンに本部を置くICPOを通じた捜査共助要請だ。実際、ICPOルートの方が主流で、警察庁のまとめでは、21年の日本からの要請件数は条約ルートが28件、外交ルートが35件だったのに対し、ICPOルートは476件と大きく上回る。
その理由は、条約ルートよりも圧倒的に早く情報を入手できるからだ。相手国や内容によって差は生じるが、簡単な照会であればその日のうちに回答を得られることもあるという。
ただ、ICPOルートが万能というわけではない。そもそもICPOは世界約190カ国・地域の警察により結成された国際組織だが、極端にいえば連絡機関としての性格が強い。このため、一般的には相手国に対し家宅捜索や差し押さえなどの強制処分を求めることができない。
一方、これまでに日本が締結してきた刑事共助条約では強制処分の要請が可能だ。これが、捜査上の有益な情報や資料の交換を目的とするICPOとの決定的な違いという。
それでも、マネーロンダリングやサイバー犯罪など犯罪のグローバル化が進むほか、容疑者の海外逃亡事案が増加する中、ICPOの果たす役割は年々大きくなっている。警察庁がICPOを通じて受理した盗難旅券などの情報数は、11年の8846件から21年は2万9994件と約3・4倍に急増。国際手配書の受理数は1万251件と11年の11・7倍に上っている。
警察庁の幹部は「相手国の捜査機関から確実、かつ迅速に回答を得るため、それぞれのルートの特性を十分考慮して要請事項やルートを決めている。今後は、日本で罪を犯す外国人の国籍などにも重点を置いて、条約の締結交渉を進めていく必要があるだろう」と話している。(楠秀司)
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